English
今井研究室 > プロジェクト > 適応型経路制御
Last Modified: 2000-08-29 (Minor Update on 2003-05-02)

研究紹介: 適応型経路制御


不規則なトポロジの相互結合網に対する適応的経路制御アルゴリズム

相互結合網の設計は並列計算機の設計での大変重要な課題であり、 これに関連した研究テーマの一つに経路制御がある。 経路制御とは、「パケットが相互結合網のどの経路を通過するか?」 を決定することであり、経路制御アルゴリズムを上手に設計すると、 遅延(パケットがあるノードを出発してから目的ノードに到着するまでの時間) やスループット(相互結合網全体でのパケット転送量) を大幅に改善することができるが、 安易に設計してしまうとデッドロック等の問題が生じてしまうため、 経路制御アルゴリズムの設計は非常に挑戦的な仕事であると言える。

経路制御アルゴリズムは、経路選択の自由度の点で二つに大別される。 一つは、決定的経路制御アルゴリズムであり、 もう一つは、適応的経路制御アルゴリズムである。 決定的経路制御では、パケットの出発点と終点の対に対して、 唯一つの経路が決定される (途中の各ノードにおいて、次に選択するリンクが唯一つに決定される)。 一方、適応的経路制御では、パケットの出発点と終点の対に対して、 複数の経路が候補として求められる。 そして、相互結合網の混雑状況に応じて、適切な経路が選択される (途中の各ノードにおいて、次に選択するリンクの候補が複数列挙され、 リンクの使用状態に応じて、適切なリンクを選択する)。 次の例は、両者の違いを示している。 決定的経路制御では唯一の経路(緑色)しか用いることができないため、 容易に混雑が発生してしまうが、 適応的経路制御では複数の中から一つを選択できるため、 各パケットが赤色の経路のように選ぶことで混雑を回避可能である。 このように、適応的経路制御は相互結合網をより有効に活用することができる。

決定的経路制御の例 適応的経路制御の例

一方、この 10 年ほどで、 ワークステーションや PC の性能は急激に高性能化し、 コスト面でも非常に安価なものとなってきた。 現在、こうした計算機を用いて、 高性能かつ安価な並列計算機(計算機クラスタ) を設計するための研究が活発に行われている。 計算機クラスタでは、wiring flexibility、及び、 scalability を追求するため、 相互結合網に不規則なトポロジが採用されているが、逆に、 この不規則性が経路制御およびデッドロックの回避をより難しいものとしている。 本研究では、不規則なトポロジの相互結合網に対して、 デッドロックフリーな適応型経路制御アルゴリズムを設計し、 より低い遅延とより高いスループットを達成することを目標としている。


kchiba@is.s.u-tokyo.ac.jp